知恵袋

ここでは、食に関するさまざまな雑学をお届けします。

 今回は栃木県の郷土料理しもつかれについて。

しもつかれ

旧暦二月の初午の日に、赤飯と、藁ツトに入れたシモツカレを稲荷社に供え、食される行事食の一つである。
栃木県を中心に、福島県南西部、群馬県東部、茨城県西部、千葉県北西部、埼玉県東部などで作られている。

その名称は、マスコミの影響によって「しもつかれ」と一般化されつつあるが、地域によってシミツカリスミツカレスミツカリツムツカレなど色々ある。
語源としては、
下野ばかり(栃木県だけで作る)説
下野の家例(栃木の家々で初午に家例として作る)説
下野の餉(栃木県で餉の代わりに作られていた)説
酢むつかり(酢入り)説
しもつかれ→「しみる・つかる」 つまり「味がしみこんだ料理」「冷たい料理」の意を表すシミツカリ説

などがある。
シモツカレの言葉と料理の源流は、中世の『宇治拾遺物語』や『古事談』に見られる。今日作られているものと同じものは江戸期の『嬉遊笑覧』巻十飲食編などにある。

シモツカレの材料は、節分でまいた残りの福豆、大根、人参、酒粕、塩鮭の頭、油揚げなどが一般的。作り方はだいたい共通しているが、味つけは家によって様々。代々受け継がれてきた家庭の味である。シモツカレは冷たい方がおいしい。

シモツカレについての俗信も多く、
「七軒の家のものを食べると中気にならない」
「藁ツトに入れて屋根に投げ上げると災難厄除」

などが有名。
塩鮭の頭や節分の福豆を入れるところや、県北での「那須野原の金毛九尾の狐の毒気落としに作る」という伝承などから、破魔力のある信仰料理と見られている。また、陰陽五行説からは迎春呪術の食べ物と解釈されている。

シモツカレは、食料が乏しかった時代に庶民が生み出した優れた栄養価値をもつ残菜食物である。
また、シモツカレには、

「初午以前には作るな」
「二の午に作るときは、初午に作ったものを残しておき、それを種として作る」

という強い禁忌も残っている。
旧暦二月初午の頃は一番食料が乏しくなる頃だ。稲荷社の祭である初午とはいえ、栃木あたりでは生きの良い魚や野菜などを用いたご馳走を作るのは難しい。そこで作り出されたのが、残り物を利用したシモツカレである。稲荷社への供物としての価値を高めるため考え出されたのが「初午以外に作ることを忌む」という俗信だったと思われる。

見た目はお世辞にも良いとは言えないが、栃木の人々が生んだ、栄養満点で、素朴な民間信仰が込められた郷土料理を、初午に食してみてはいかがか。